人生のスパイス(プロット)1

好きが届かないより辛いことは無い。もう好きにならないように、心に蓋をした。どうか、これ以上傷つきませんように..。相思相愛がこんなにも難しいものなのか。周りの恋人たちを心から尊敬する。

私は19歳の頃から精神的な不安定さに悩まされていた。時には長時間の通院を課され、苦悩しながら日常生活に支障がでないよう試行錯誤して、現在は大手メーカーで勤務している。しかし、精神的な不安定さからくる不調は相変わらずやってきた。また、1年前に2年付き合い、婚約破棄した相手がいた。

2020年7月。私は婚活に精を出していた。そもそも婚活を頑張ることは私の求める姿に遠ざかる行為だったのだが、当時は何も気づいていなかった。ただ、「結婚」という目的に向かって最適化した方法で頑張るということしていた。その結果、激しい消耗により精神・肉体共に限界を迎えた。

私はもともと自己肯定感が低い。いつでも自分は死んでも良いと思っていた。それでもそんな自分を変えたくて、まずは自分の容姿をできるだけ整えた。ブスが性格悪いとなると良いところは何もないため、性格も良いように自分を矯正した。人とのコミュニケーションはもともと苦手だったが、鍛えた。

その結果、そこそこの容姿のコミュ強の皮を被った陰キャ自己肯定感低いクソ女が誕生した。婚活は瞬発力勝負。ありとあらゆるところでモテまくった。それでも、私の自己肯定感が高まることはなかった。なぜなら私の絶対的基準は私の中にあり、それにが満たさされなければ意味はなかったからだ。

自分のキャパを超えた行動が続き、私は大きな病み期に陥った。何度もこの局面に遭遇していたが、今回こそ乗り越えるのは厳しいと感じる要因があった。1つ目は今まで支えてくれていたパートナーが不在であること。2つ目は会社の業績が下方傾向で不安があったこと。3つ目は頼れる友達の相次ぐ入籍

であった。ただでさえ精神的不安定になりやすい状況下で今まで頼りにしていたものも希薄になり、不安定な期間は長引いた。毎日会社で死にたいと泣いていた。そんな中拠り所になったのがTwitterであった。私はいつも自分が不安定になるとTwitterを拠り所にするところがあった。

Twitterの良いところはリアルでは名前も顔も知らない人物と簡単にコミュニケーションをとったりつながることができる点である。それが自分の垂れ流した文字への反応なり、アンケートや特定のツールを用いたり深いコミュニケーションへと発展させることができる。そうして私は「彼」と出会った。

Twitterで出会った人は「すれ違った人の延長」でしかない。そのため、普通なら言えないようなことも話しやすい。そうしてたまたま繋がった「彼」とは私の病んだ心情の吐露(ゲロの処理)の相手として始まったのだ。それがこんなことになるとは3ヶ月前の私は想像していただろうか。。

「彼」をここから8と呼ぶ。初めて8と電話した時、私たち初めてにもかかわらずとても己の心理的な深い話をした。彼と話しているうちに、彼のずば抜けた思考力と論理力に只者でないと感じた。私も思考力、論理力面で秀でたものがある部類ではあったが、到底及ぶものでなかった。

それから私は解決策が知りたい時や微細な心理状態を説明してその理由を解き明かしたい時に、8に連絡するようになった。8は幸い暇だったので、いつでも私の話を聞いてくれた。 8も自分の話をよくしてくれた。聞けば聞くほど、私と8は考え方、境遇、悩みが酷似していた。

そのため、8と私はよく心を通わされることができた。8もまた、元カノと私が元彼と別れた同時期に分かれており、心の傷口は大変似ていた。タイムリーで出会うべきタイミングで出会ったのかもしれない。彼との対話は時にカウンセリングであり、私はみるみる回復した。

2020年9月。私と彼との通話は10回を超えていた。次第に私は彼に恋心を抱くようになった。自然なことだと思う。彼もまたそうだと最初は思っていた。 「会いたいです」私は素直にそう言った。「いいよ。9月4連休あるね、こっちくる?」こうして9月の4連休に我々は会うことになった。

ここで1つ大きな問題があった。8と私の物理的距離はおよそ600Kmあった。4連休に会う=泊まりである。うちに来ていいと8は言ったが、仮にお互いシングルであったとしても、我々は妙齢の男女であるのだから、云々。私はしばらく悩んだ。

8と4回夜を同じ屋根の下で過ごしたら、この私が何もなくて終わるはずがないと直感でわかっていた。だからとても悩んだ。ポリシーを曲げてまで、行くべきか。それを素直に8に相談した。「前も女の子を家に泊めて何もないことあった」

今思うとその時点で違和感を覚えるべきだった。私は「なら最悪しなくてもいいかもしれない」というなんとなくの楽観主義で、彼の元へいく手筈を整えた。しかし、覚悟は決めた。性的な関係ないならない確率は30%。そう思って、来たる日を迎えた。

仕事終わり、私は早々に帰宅し、荷物を手に取り電車に乗った。彼の家の最寄り駅まで着くと、写真では見たことがあったその人が待っていた。慣れた感じで手早くタクシーを手配した8は超絶早口で街を車窓から案内してくれた。彼の家まで着くと、窓から見える景色の説明も家の中の説明も

私でなければ理解が追いつかないであろう(自画自賛)スピードでなされた。長時間の移動で疲れていたとはいえ、よく1回で理解できたと私は自分を褒めた。その後軽くお酒を飲んで、その夜、どこで寝るかと聞かれた。選択肢は2つあり、彼のベッドかリビングのソファーかであり、私はソファーを選択

1日目の夜は別々で寝ることになった。8から借りた毛布には8の匂いが染み付いていた。私は大の匂いフェチである。早速不安になった。そしてほとんど眠ることができなかった。8もまた、眠れていないような気配がした。

2日目、軽くシャワーを借りて、その日は8の住む街を散策した。お昼に焼肉を食べて、色々歩き回った結果14時にはお互い疲れて部屋に戻った。部屋のソファーでうたた寝をしていると8は私の腰を掴み揺すってきた。なんとなく、外でご飯を食べてから8が出す雰囲気は私を性的に見る男そのものだった

私を性的に見てくる男は簡単だ。まず体の方向を私に向けてくる。私をマジマジと見て距離が近くなる。今まで50人以上の男とサシで会っていれば大抵そんなことはわかるようになる。大抵私はそこから硬く自分を律し、性的な隙は一切見せなくなる。そうすると男は脈なしと判断し、私は何事もなく

いつもは帰るのだ。しかし、今回帰る場所はここしかない。8に体を触られた時、私の女の部分はもう完全にスイッチが入った状態になった。これはまずい。必死で眠いとアピールして難を凌ごうとした。が、次の瞬間、体が宙を浮いていた。いとも簡単に抱き上げられ、私はベッドまで運ばれたのだ。

「もう、重いから!!」顔を手で覆いながら必死に恥ずかしさを抑えた。ベッドまで運ばれ、「新規1名様ご案内」と8は呟いた後、「何時に起こせばいい?」と言った。私は咄嗟に「2時間後くらい」と答えた。「おやすみ」寝室の扉はそう言って閉ざされた。私はこの状況を理解するのに時間がかかった

ベッドはふかふかでとても寝心地が良かった。混乱よりも眠気が勝った私は、1時間ほど本気で寝てしまった。それから、この状況を整理しようとしたが、できなかった。そしてちょうど2時間経過後自ら寝室を出た。8は何食わぬ顔でゲームをしており、「時間ちょうどだね」と言った。

 

それから何もなかったかのように、一緒にテレビを見ながら、デリバリーで注文したご飯を食べた。教養として彼がお勧めしてきたアニメをその日6話までみた。私はそのアニメにずっと興味があったので、良い機会だった。他のことを考えないようにずっとアニメに集中して見ていた。

そして、事は起こった。深夜1時。私の眠気はMAXを超えていた。すると8は「今日こそはこっちにおいで」と言った。私はついにきたかと思った。「避けられないのか」と呟いた。8はどういうこと?とよくわかっていなかったが、8のベッドで一緒に寝ることになってしまった。

寝室に入って扉を閉めた時、深呼吸をした。ベッドの左端に私が転がると、8は右側に横になった。そして腕を広げ「おいで」と私に言った。突然冷静になった私はこれは抱きしめられるだけだな。抱きしめられたい。という気持ちになり、思いっきり8の腕に飛び込んだ。そして大きな体で包み込まれ

抱きしめられた。半年ぶりだった。人の温かみを感じるのは。とても気持ちが安らいだ。「おやすみ」そう8は言ったのであー寝るのだな。ふむふむと私は寝ようとした。しばらく抱きしめられた状態が続いた。しかし、首元にやたら息がかかる。8は私の首もとに顔を近づけているように思えた。

息が荒い。8が大きく息を吸い込んだかと思うと、次の瞬間私の首筋に噛み付いた。咄嗟に避けようとするが、足を絡められ動けない。そのまま首から耳にかけて念入りに舐められる。ゾクゾクする。体はビクビクと反応するが避けられない。「なんのつもりで舐めてるの?ねぇ」

そこに首筋があるから」意味がわからない。頭の中は大混乱でその質問を4回は繰り返した。次第に背中を舐めた後念入りに撫でられ、手は胸を揉みしだき、口で首を舐められた。私は限界だった。そして足の太腿に8の硬いものも当たる。「どうする?これでやめてもいいよ」馬鹿か。

こうして我々は体の関係になった。8のものは私には少し大きかったが、私の元彼たちもまたそれくらいだったので、気持ちいいところはよく体が知っていた。私は自分の最奥が突かれるたびに快感に打ちひしがれ、体を震わした。8はいろいろな体位を私で試した。初めて私は自分からギブアップした。

何回いったか正直覚えていない。大きくいったのは3回だろうか?くらい曖昧だった。その夜はそのまま寝て、次の日の朝、起き抜けにまたして、終わった後、我々は冗談を言ったりして笑い合った。それはまるで本物の恋人のように自然で、幸せな時間だった。3日目は14時過ぎから始まった。

3日目は雨だった。ずっとアニメを見ながらゴロゴロ過ごした。ついに2日間で13話のアニメを見た。それから8が勧めてくる今季の面白いアニメを見てから、一緒に天気の子を見た。正直微妙で、その感想は8も一緒だった。それがちょっと面白かった。3日目の夜もグダグダになって、4日目の予定を立て

た。4日目は晴れだった。朝も一通りした後、準備をして出かけた。電車に乗っていろいろ観光した。8の歩くスピードは早くてなおかつ案内に無駄はなかった。私は日々鍛えているおかげで全く足に負担を感じず、計2万歩を歩いた。帰りにピザを注文してギリギリ受け取りに成功した。楽しい。

ピザを食べた夜、お酒を飲んだ。私は最後の夜だからと、8に言いたいことを言うと思った。上手に伝えることができない。夜ベッドの上で、私はそれとなく思いを伝えた。8は混乱していた。嘘でしょ。。。同じ気持ちなのだと思っていた。でもそうではなかった。私はとても悲しい気持ちになった。

その瞬間私の体は一ミリも反応しなくなった。それはもう見事で、泣き言を言いながら私は不貞腐れていた。そのうちに8は寝室を出て行ってしまった。「ねぇなんで?」「だって、ベッドで寝るときはする時なんでしょ?」「そんなこと言ってない。ねぇ、最後の夜だから一緒に寝よ。お願い」

ただをこねる子供のように、私は一緒に寝ようと懇願した。そして渋々8は寝室に戻ると一緒に距離を開けて寝た。私はフラれたのだ。そして少し8の背中におでこをつけてざめざめと泣いた。泣いたらスッキリしてよく眠れた。そして最終日を迎えた。

最終日は予定が詰まっていた。私は夜19時までに電車に乗らなければならない。8と電車に乗って出かけ、途中ビールを飲んで歩いて、とても楽しい時間を過ごした。昨日フラれたのにもかかわらず。そして14時頃部屋に戻ってから、最後に我々は体を合わした。

つかれながら私は「好き」と言った。そして即答で「ごめん」と返ってきた。私はセックスしながら悲しくて泣いた。なんてことだろう。終わった後、8は論理的な私に情がない理由を述べた。恋に落ちる感覚がないのだそうだ。この4連休の目的は私へのセラピーだったのだ。猫や犬を愛でるように

確かに8は私に接していた気がした。それは確実に愛ではあったが慈愛であって、恋愛ではなかったのだ。私は2度フラれた。けれど、スッキリした感じはあった。確かに愛情に飢えていた私はとても回復した。セラピーは大成功だったようだ。最後に8は「お願いがある」と言った。

そう言って私を優しく抱きしめ、私は抱きしめ返した。確かにそこには愛があったと思った。「次も来てもいい?」帰り際私は8に聞いた「お互い相手がいなかったらね」そう言って、我々はなんとなく約束もせず、分かれた。そう、これで終わりでよかったのだ。なのに。。。